『白鯨 (ハーマン・メルヴィル著)』は、アメリカ文学の最高峰のひとつです。
伝説の巨鯨「モビー・ディック」に片足を食いちぎられたエイハブ船長。
彼が復讐のため、船員を率いてピークォド号で旅をする物語です。


★ピークォド号が追う白い鯨。
「白鯨」は運命、自然、または神を象徴しています。
人間には古来より、白蛇、白鹿など、白いものを神聖視する習慣があります。
地上最大の生物、鯨。
白い鯨は、まさに神の象徴です。

世界中の海域で出没し、何隻もの船を沈没させた怪物。
高い知能を持ち、伝説的な存在として語り継がれているモビー・ディック。

モビー・ディックを追うピークォド号には、白人、黒人、黄色人種など、あらゆる国籍の船員が乗りこんでいます。
これは「全人類」の象徴。

本作は、全人類が団結し、神に挑戦していく物語だと読むことができます。


★ラストシーン。
ピークォド号とモビー・ディックの直接対決！
エイハブの復讐劇はどうなるのか。.
ピークォド号の乗組員たちは無事なのか。
緊張感があって読み応えたっぷりです。



★ハーマン・メルヴィルは、読者もピークォド号の一員にするのが狙いでした。
捕鯨といっても、何日間も鯨に出会えないこともあります。
捕鯨の退屈さや、ゆったりとした時間の流れを読者に体感してもらうために、1000ページ以上ある大作にする必要がありました。

書かれたのは1851年。
ペリー艦隊が浦賀に来航する2年前。
江戸時代です。

実話にインスピレーションを得て創作。
19世紀前期に、太平洋に生息していた1頭の名高いオスのマッコウクジラ。
その異名が『モカ・ディック(Mocha Dick)』です。
※実話のモカ・ディックについては、下に記しました。


片足をモビー・ディック(白鯨)に食いちぎられ、復讐に執着している船長エイハブ。
彼は、偏執狂的な老人として描かれています。

これまでに出版された『白鯨』は数知れず。
どれも同じに思えますが、本文以外の "要素" に差があります。

長編小説では、イラストは重要な役割があります。
ちょっと疲れたなと思ったとき、次に読み進むための、階段の踊り場のような役を担っています。

本書の挿し絵は、すべて美しく迫力あるカラーイラスト。
画家はアントン・ロマエフ(Антон Ломаев/Anton Lomaev)。
※1971年 ロシア(ペテルブルグ)生まれの芸術家です。


「人魚姫」「おやゆび姫」など、多数の絵本を手掛け、その雅やかで華麗な作品は世界中の人に愛され、絵画美術としても高く評価されています。

圧倒的で美しい色彩、華やかで流麗、ドラマチックなイラスト。
アントン・ロマエフの絵を眺めるだけでも価値ありの書籍です。


★余談ですが、コーヒーチェーン店「Starbucks スターバックス」の名前の由来は、本作に登場する航海士"Starbuck"
です。
看板が海のイメージになっているのは、そのためです。
創業者が3人だったので、複数形の「スターバックス」となりました。

また、漫画「ONE PIECE」で、白ひげ海賊団が乗っている船が「モビー・ディック号」。
『白鯨』に由来していると考えて間違いなさそうです。



◆出版社:Pegasus Books
◆発売日:2018年9月4日
◆言語:英語
◆ハードカバー
◆サイズ(約): 29cm x 22.5cm x 4cm
◆533ページ
◆ISBN:978-1-68177-848-8



★日本語訳を読み、挿し絵付きの「白鯨」を探して購入しました。
イラストが目的で購入した洋書です。
英語はニガテなので読んでいません。
絵だけを眺めて楽しんでいました。

大きな傷みは見当たりませんが新品同様をご希望の方、落札後２４時間内に『取引を開始する』のご連絡を頂けない方、落札から３日以内にご入金頂けない方のご入札をお断りいたします。






【『白鯨』の内容】
※ピークォド号…この名前は、白人に滅ぼされたインディアン部族からきています。
アメリカ人(白人)であるエイハブがこの船に乗り「白鯨(白)」鯨を追うという構成。
…意味深。


※主人公…イシュメール。
名前の由来は、旧約聖書でアブラハムが奴隷女ハガルに産ませた子の名前です。
その後、アブラハムの本妻が、ハガルを追い出します。
そこから「イシュメール」＝「放浪者、追放者、世に歯向かうもの」という意味に。
…これまた意味深。


※船長…エイハブ
旧約聖書の「アハブ」に由来。
アハブはイスラエルを捨て偶像崇拝者になり、神の怒りを招きました。
彼が死んだあと、彼の血には犬が群がり、遊女が体を洗ったとされています。
…不吉な名前です。


◆アメリカの捕鯨船団が世界の海洋に進出し、さかんに捕鯨を行っていた19世紀後半。
語り手のイシュメールは、港の安宿で同宿した、巨漢の銛打ち、クイークェグと出会う。
ともに捕鯨船ピークォド号に乗り込んだ。


◆出航のあと甲板に現れた船長エイハブ。
彼は、かつて『モビー・ディック』と渾名(あだな)される白いマッコウクジラに、片足を食いちぎられていた。
鯨骨製の義足を装着している。


「白鯨」に対するエイハブ船長の復讐心は並外れていた。
モビー・ディックを悪魔の化身とみなし、復讐に執念を燃やす。
それは、狂気と化していた。

エイハブ船長を諌める冷静な一等航海士スターバック。
常にパイプを離さない陽気な二等航海士のスタッブ。
高級船員の末席でまじめな三等航海士フラスク。
銛打ちの黒人ダグーや、クイークェグ。
インディアンのタシテゴなど。
多様な人種の乗組員にエイハブの狂気が伝染し、白鯨に報復を誓う。


◆長い旅の末。
ピークォド号は日本の沖の太平洋でモビィ・ディックを発見。

ついに白鯨と対決をする。
エイハブ船長は自らボートに乗り込み、直接接対決となる。
モビー・ディックに銛を打ちこむが…。
彼らの対決の行方は…？！






【モカ・ディック（Mocha Dick）】
◆19世紀前期に太平洋に生息していた1頭の悪名高いオスのマッコウクジラの異名。

◆通常は、南米チリのモカ島の近海を回遊していた。
多くのマッコウクジラと違い、モカ・ディックの体色は白かった。

◆モカ・ディックは、群れを守るために大型の捕鯨船を沈めたりするなど、驚異的な力を持った鯨だった。
巨大で逞しく、小さな船なら尾鰭で難破させることができるほどであった。

最終的に殺されるまで、少なくとも100回以上の鯨捕りたちとの戦いを生き残ってきた。

◆恐らく1810年より前に、モカ島沖で最初に船舶と遭遇し、攻撃を受けた可能性が高い。
最初の遭遇を生き残ったモカ・ディックは、その特異な外見と相俟って、ナンタケット島の鯨捕りの間で早々に有名になった。

数多くの船長たちは、ホーン岬を巡った後にモカ・ディックの姿を追い求めた。
モカ・ディックは全く温順に振る舞い、時には船体の傍らについて泳ぐほどであった。

◆だが、一旦攻撃を受けるとモカ・ディックは獰猛になって仕返しをした。
捕鯨船の銛打ちたちに広く恐れられた。
興奮したときは、モカ・ディックは一度潜水してから海面まで激しく上昇。
時にはその巨大な体躯を完全に中空へと躍り上がらせるほどであった。


◆1839年5月 探検家のJ.N.レイノルズは、モカ・ディックに関する観測記録『モカ・ディック、または大洋の白鯨 航海日誌』を、雑誌に掲載。
「年老いた雄鯨で、巨体と強さを備え、羊毛のように白い」と書かれている。

レイノルズによると、白鯨の頭部はフジツボに覆われていたため、ごつごつした外見を備えていた。
モカ・ディックは、特有の方法で潮を噴き上げていた。
※斜め前に潮を噴出する代わりに、鼻を鳴らす音とともに、短く激しい一息を吐いた。

◆1838年 捕鯨船に殺されそうになって動揺していた幼いクジラを助けようとして出現。
そこで捕殺された。
その体長は70フィートに及び、100バレルの鯨油と幾らかの龍涎香が採取できた。
同時に、その体内からは数本の銛も出てきた。






【ハーマン・メルヴィル】
◆ニューヨーク出身。
幼い頃に父親が借金を残して死亡。
その後は波乱に満ちた人生を送っています。

◆小説で名声を得ていた時期もありますが、売上が落ち、小説家としては生活ができなくなってしまいます。
『白鯨』も生前はまったく評価されませんでした。

◆教師、税官吏、水夫など、10を超える職業を転々とし、食人種に捕まったこともあります。
捕鯨船の乗組員だった時期もあり、この経験が本作の基になっています。

◆晩年には長男が自殺。
次男は失踪したのちに死亡。
自宅は火事になるなど、不幸の連続でした。
死の直前にはほとんど発狂していたといわれています。

◆お世辞にも幸福だったとはいえませんが、作品にみられる人間や人生への深い洞察は、この波乱万丈の生涯によって培われたのでしょう。

死後30年してから本作は再評価。
今では世界文学史に残る傑作になっています。





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